『雅(みやび)先生』

(*N大学運営SNSの筆者アカウントへの投稿を一部編集し掲載しています) 【プロローグ】  人生の一時期には、その後になって思い返すと何とも不可思議な出会いというもが大なり小なりあるものです。雅先生(以下M先生と記す)との邂逅も今にして思えば、偶然が招いた遠い過去のひと時の白昼夢だったのかもしれません。  M先生とかねて四季を通して毎月のように昼下がりのひととき喫茶をした時期があった。先生と面識を得てすでに久しかったが,その年間を通した語らいの場は、それまでにも増してボクの心に静かな余韻と影響を残すものになった。  M先生はすでにいくつもの社会的な肩書きを持っておられた。そのどれもが世間体的に眩しいものばかりだった。有名医大名誉教授,医学者,医師。だがその一年来の語らいを通し,ボクがM先生を師と仰いだのは文士としてのM先生であった。 M先生は創作活動の急峻に果敢に挑まれ葛藤し,遂に一篇の作品を書き上げられた。その作品は,ボクに忘れかけていた文学への情熱を蘇らせて下さった。ボクも書こうと思った。M先生が語られその折々ボクが感じたことをもってして、ボクの文学再開に相応しいように思われた。 【2】  M先生との語らいのひとときは,ボクにさりげなく様々なインスピレーションや人生の道標を与えて下さった。M先生がまだ現役の大学教授だった時は、季節ごとに午後から教授室にM先生を訪問し、応接セットに向い合ってM先生との語らいのひと時を過した。ボクはM先生を尋ねる際は…

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マインドコントロール

(*N大学運営SNSの筆者アカウントへの投稿を一部編集し掲載しています。)  午前中から各局テレビで大きく報道が続いているが、この戦後最大にして最も凶悪なテロ犯罪を起こした集団について、事件当時に盛んに指摘されていた「マインドコントロール」という言葉を思い出した。  地下鉄サリン事件から23年が過ぎたが、あの日、僕も地下鉄で被害に遭う可能性があったこともあり、あの事件は決して忘れないでいるし、あの凶悪犯罪集団を今でも許せないでいる。あのテロの実行犯を巡って、頻りと当時はマインドコントロールという言葉が報道された。普通の心理状態ならば医師を含む学歴エリートの犯人たちが、あのような凶悪テロを実行するはずがない、マインドコントロールされていたという論調だ。  その後、一連の裁判でもあのような未曾有の無差別殺人テロを行った目的の真意は、断片的に推測される範囲でしか判明しないなかで、遂に結審し死刑判決が下されて行った。なぜあの集団の首領が国家転覆を企んだのかは、裁判の法廷でその真相は明らかにならなかった。この一連の事件を追い続けているジャーナリストたちは、テレビのコメントの求めに応じて、このまま全員の死刑が執行されると永遠にその真相は解明されずに終わってしまうことを指摘していた。  僕一個人の感情は、彼らの死刑執行を支持している。だが、理性は、事件の本質解明と二度とあのようなテロが行われないための事件の全容解明を今も強く求める。二律背反の矛盾を感じている。  ところで、…

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盛岡慕情

 今年の春、都内の百貨店で開催された岩手県の物産展で、ベアレン醸造所(盛岡市)の生ビールを飲む機会がありました。  かねて、盛岡市材木町のイーハトーブ通りで春から秋まで毎週土曜日に開催される「よ市」に出店していた同醸造所のコーナーで初めて飲んで以来、この地ビールの美味しさに魅せられていました。その後も盛岡市に出掛ける度に材木町の光原社に立ち寄っては夫婦でそのまま「よ市」をぶらついてこの生ビールを楽しんでいましたが、今回はあれから十数年の盛岡行ブランクを経ての都内で味わえる機会となりました。  今回は妻の古くからの友人で盛岡市出身の友人も一緒で、盛岡を代表するこの地ビールが切っ掛けで盛岡市のローカルな話題で楽しく盛り上がりました。同時に、地酒の持つ文化的な存在意義を実感した機会でもありました。  この体験で盛岡市への慕情が募り、今年は必ず文学と地酒の香り漂う盛岡に遊びに出掛けたいと思いました。ところで、妻の友人もそうなのだが盛岡市には美男美女が多いのだが、なぜなのだろう。長年のどうでもよい謎でもある…。

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