『白い巨塔』(山本薩男監督・大映・1966年作品)

(N大学運営SNSの筆者アカウントへの投稿を一部編集し掲載しています)

 35ミリ映写機・ワイドスクリーンで山崎豊子・原作、山本薩夫・監督の1966年大映作品『白い巨搭』モノクロ150分を観賞した。

 冒頭から、ワイドスクリーンに田宮二郎が演じる財前五郎のメスが、一気呵成に開腹する術野がクローズアップされるシーン、手際よく胃が全摘、縫合されるまでが描かれ、それはもうモノクロ画面であるからこそ一層生々しく迫力があって圧倒された。

 1966年当時の手術室の様子や術式、器材、さらにはレントゲン断層撮影の様子などリアルに描かれているのも、今は亡き巨匠・山本薩夫監督ならでは真迫の演出なのであろう。

 『白い巨搭』はこれまでに映画やテレビドラマとして作品化され、どれもそれぞれ傑作になっていると思うが、この田宮二郎の財前と、まだ若き田村高広が演じた里見は実に良い。ことに田宮二郎の財前を超える役者はなかろうかと思った。改めて田宮二郎は大役者であったことを実感させられた。若くして亡くなられたことが悔やまれてならない。

 それにしても、時代背景と役者陣が代わるとこうまで凄みが出るものかと終始圧倒されスクリーンに釘付けになった。東野英治郎の東教授、加藤嘉の大河内教授(病理)が何ともいえない存在感があった。また、財前と教授選を闘う菊川教授を演じた端正な容貌の船越英二がまた脇役ながら好演だった。いどれもすでに鬼籍に入られた輝かしい映画俳優たちの演技は輝いていた。

 大河内教授の病理解剖のシーンは、気の弱い方にはオペシーン同様にとても正視に絶えない真迫さに加え、最近のドラマでは台詞は標準語になっていることが多いが、この作品では関西弁である。この関西弁であることが一層ドラマのテーマの陰影を凄みをもって体現していた。

 凄い映画を見たと思った。邦画が輝いていた時代の空気が伝わって来た。このような重厚な邦画の再興を切に願います。


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